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マザーツリー物語

母なるみかんの木といのちの物語

ある小さな町の小さな丘に、大きな1本の木がありました。
『ここからは、みんなの様子がよく見えるのよ』
 
ここは、鹿児島県。 人口6000人にも満たない小さな町の『クルス農園』です。
クルス農園にはみかんの丘があります。 その一番高い位置に、
樹齢約60年の大きなみかんの木があります。
 
十万温州という品種の、とても美味しい温州みかんです。

寒さの厳しい2月ごろ、みかんの木は考えます。
『今年は、体を大きくしようかしら? それとも、たくさんの実を成らせようかしら』と。

みかんの木にとって、果実を成らせることは大仕事。たくさんのエネルギーを要します。
つまり、実を成らせるということは、
木自身への養分を減らし、命を削って子供である果実を育てるということ。

木を成長させれば実が減り、
実をたくさん成らせれば、木の成長が鈍ります。
この選択を、木自身が決めているのです。

『今年はねぇ、実をたくさんにしたいのよ。 きっと賑やかになるわ。よろしくね。』
木は、農園の主人に語りかけます。
『まかせとけ!美味しいのいっぱい実るように、 一緒に頑張ろう!』
農園の主人である農園長は、この『実を成らせる』と『木の成長』の意志を読み取り、
みかんの木が十分に力を発揮できるよう、剪定の技術によって導きます。

こうして大きな決断をした母なる木は、
5月に入るころ
真っ白でとてもかわいい花を咲かせます。
みかんの丘は真っ白に染まり、
とても良い香り。

『今日も雨。そろそろかしら・・・』

梅雨が始まる少し前、
みかんの丘を真っ白に染めた花は散り、
小さな小さな生まれたての実が誕生します。
自然の恵みと母からの栄養をもらいながら、
その小さな小さな実は、
すくすくと成長をしていきます。

 

『それにしても、ちょっと頑張りすぎじゃないか?』
『そうかしら?』
みかんの木は、とてもたくさんの実をつけます。・・・ところが、その多くは切り落とされてしまいます。

『仕方ないのよね。でもやっぱりさみしいわ。
美味しく食べてもらって喜んでもらうことが、 私の役目だものね。』

あまりたくさんの実を成らせると、収穫の時に、とても小さなみかんになったり、
美味しさがなくなったりするため、収穫までたどり着くのは半分以下なのです。

『くよくよばかりしていられないわ! さぁ、みんな!いいわね!ここからが頑張り時よ!』

『私は、あなたたちに、みんなに喜んでもらえるみかんになって 欲しいの。
だから、これからは、優しいばかりじゃいられないわ。 あなたたち自身が持ってる力で、強く生きなさい。』

成長の過程で水分を減らすなどの負荷をかけることは、
果物本来の力を発揮させ、甘くて美味しい果実へと成長します。
反面、木にとっては大きな負担でもあります。

『おやおや、今年の風は、いちだんと強いわねぇ。みんな、しっかりつかまるのよ。』

台風です。
鹿児島県は、台風でみかんの木が
折れることもあるほど、
台風被害の多い土地です。
年々強くなる日差しと戦いながら、
過酷な夏を超えたみかんは、
台風にも耐え、
やがて迎える収穫期に向けて、
たくましく成長していきます。

みかんの木と農園長は、二人三脚で多くの苦難を乗り越え、
生まれたての小さな小さな果実を、
長い月日をかけて守り育てます。

 

そして、朝晩が急に冷え込む秋の終わりごろ、いよいよみかんが色づき始めるのです。
『よく頑張ったわね。みんな、とても立派よ』

こうして収穫を迎えたみかんの木は、
また、つかの間の休息期へと入ります。
また来年、
美味しいみかんを届けるために。

みかんの木は、母なる木。
四季を感じながら、
1年を通して果実へ命を繋いでいます。

そして、それは、木自身も・・・
やがて、その役目を終える時が訪れます。

 

みかんの実を育て 、農園の一番高いところからみんなを見守り続けたマザーツリーも樹齢 60年。
新しい木へ、その役目を受け継ぐ時がきました。

『美味しいみかんを成らせるのよ。それがあなたの役目。
そして、いつかあなたも農園を見守り、
みんなに喜ばれる木になってちょうだいね。』

新しく植えられたその木は、 3年かけて少しずつ実を成らせていきます。
最初は未熟なその木も、長い時を経て、
みんなに喜ばれる木に成長することを願わずにはいられません。

 

物語は続いてゆきます。